脳卒中の病院前救護(その他の病院前救護脳卒中スケール その2)


(AmazonHPより)


PRESTO試験は初めて脳卒中スケールを同時に比較した試験で、昨年Lancetに載りました。

Lancet Neurol 2021; 20: 213–21 DOI:https://doi.org/10.1016/S1474-4422(20)30439-7)

オランダで行われた試験ですね。


おおきな論文をひとつ紹介するときはPICOで行おうと思います。

これ、とくに研修医の先生はこのやり方で臨床論文読むクセをつけたほうがいいと思います。このやり方を習熟している先生が、より論文スマートに読めて優秀な先生だと羨望の眼差しですね。

ということで今回は

Patient:

18歳以上のFAST陽性(発症6時間以内)で、低血糖は否定された人

Intervention:

 追加でRapid Arterial oCclusion Evaluation (RACE), Los Angeles Motor Scale (LAMS), Cincinnati Stroke Triage Assessment Tool (C-STAT), Gaze-Face-Arm-Speech-Time (G-FAST), Prehospital Acute Stroke Severity (PASS), Cincinnati Prehospital Stroke Scale (CPSS), Conveniently-Grasped Field Assessment Stroke Triage (CG-FAST),  the FAST-PLUS (Face-Arm-Speech-Time plus severe arm or leg motor deficit) testの8つの検査(多いし名前ややこしや・・・)を行い、搬送先でCTAで前方循環系の虚血性脳卒中(anterior large-vessel occlusion: aLVO)の評価を行う。

Comparison:

搬送先の病院での医師によるNIHSSとの比較

Outcome:

8つの脳卒中スケールはだいたい一緒で、医者のとったNIHSSがいちばん良かった

前方循環系の主観動脈閉塞にはRACE、G-FAST、 CG-FASTが少し優れている



・・・というか検査の指標多くないすか???((((;゚Д゚))))


KeyのFigureは下になります。 やはり救急医のとるNIHSSが一番高いのは当然ですが、他のスケールが似ているかと言われると、結構似てますよね!


補足すると、発症6時間以内の前方循環というのは血栓回収療法を意識していると思います。各試験で、主観動脈閉塞を疑う点数が規定されているのですが、例に取るとCPSSは3点をカットオフとし、感度0·57 (0·48-0·66)特異度 0·85 (0·83-0·87) などと、各スケールについて詳細にデータが載っています。サプリにデータがめちゃくちゃ充実しております。



でもこれ、救急隊涙目な臨床試験ですねこれ・・・


最後に、G-FASTとRACEの補足をして終わろうと思います。

G-FASTはその1でも説明しましたが、FASTに偏視をいれたものです。

各1点ずつで、3点以上がaLVOのカットオフになっています。

私は普段救急隊から連絡受けるとき、CPSSの点数言ってもらって偏視を確認して、血栓回収療法の適応かざっくりイメージしてたのですが、これからはG-FASTのイメージで点数付けしてもいいなと、思いました。


最後にRACEです。


RACEは日本語訳をみつけられなかったので作ってみました。5点以上で血栓回収療法のカットオフとしています。(Perez de la Ossa, et al. Stroke. 2014;45:87–91 https://doi.org/10.1161/STROKEAHA.113.003071)
スペインで、これを使ってt-PAしかできない施設、t-PAも血栓回収療法もできる施設に振り分ける臨床試験を行っているようです。


2回続けてあまり一般の方にむけた論文読んでないので、次どうしよっかな…