脳卒中急性期の血圧管理って…??

 



最初の数回は、病院外救護の話をさせていただきました。

これからは、院内でまずどう対応するかについて説明します。


脳出血をみつけたら、まずすることは何でしょう?



…正解はなるはやの降圧です。


では、脳梗塞をみつけたら、まずすることは何でしょう?



…正解は降圧ではありませんが、場合によっては降圧します。




院内発症や、内科当直の先生であったり、研修医の先生は初療で関わることがあるかと思います。

その場合、発見したらまずどうしたらいいのかを、簡潔にまとめて行こうと思いました。


まず、脳卒中ガイドライン2021での血圧管理をまとめてみました。



急性期で下記疾患と診断した場合

脳出血:収縮期血圧140mmHg以下(110mmHg以上を考慮しても良い)

脳梗塞:降圧しない(ただし、収縮期血圧>220mmHgまたは拡張期血圧>120mmHgを超えていたら降圧しても良い) ※

くも膜下出血:収縮期血圧160mmHg以下




上記を参考にしていただければと思います。



脳梗塞に※をつけましたが、これはt-PAをやる場合話が違ってくるということです。

くも膜下出血についてはガイドライン上は160mmHg以下に、、と書いてあるのですが、実際にはより降圧する先生は多いと思いますので、担当の先生に確認したほうがよいです。


速やかに対応しなきゃいけないのか、についてご理解いただければと、2つ文献を出しておきます。(Cerebrovasc Dis. 2018;46(3-4):118-124.

2009年から2011年まで、日本の10施設で脳出血急性期の前向きのデータベース登録を行いました(具体的にはテント上の脳出血)。SAMURAI-ICH研究と言って、この研究から多くのサブ解析が出ており、そのひとつを例にあげます。


下の図は、降圧が達成されるまでの時間と、血腫が増加した割合を検討したものです。

CT撮ったあと、すぐに降圧したほうが有意に血腫増大は抑えられるとの結果です。
(こういう引用するときに、わかりやすいようにと日本語にはしてみているのですがやり方はこれであっているのでしょうか…簡潔に意識すると論文の主旨と違ってしまっていたらと悩んだり。。。)


観察研究であり、発症後血腫が増えた患者さんが211人中31人と少ないのがLimitationにはなるのですが、他にも国際多施設共同臨床試験INTERACT2のサブ解析でも(Stroke. 2016;47:1651–1653発症1時間以内の降圧(目標収縮期血圧140mmHg以下)がもっとも血腫増大率が低かった、とされています。


出血が増えない、ということは患者さんの予後もよくなる可能性があがります。手術も避けられる可能性があります。

Time is Brainといいますが、とにかく初療での対応、院内発症でもたまたまでも、降圧をどうしていくか、覚えていただければ幸いです。