脳卒中急性期の話は、どちらかというと医療従事者のための話です。
脳卒中になったあと、日常生活に戻られてどれくらいの血圧を目標にするかは、どちらかというと患者さんやそのご家族が気にされるお話になりますよね。
脳卒中ガイドライン2021にはこう書いてあります。
・脳梗塞後の再発予防
基本的には(例:ラクナ梗塞、抗血栓薬内服中)
→ 130/80mmHg以下
両側内頚動脈高度狭窄や主観動脈閉塞があるとき、またはまだ評価してない
→ 140/90mmHg以下
血管が細かったり、なかったりしたら140mmHg以下にするけど、基本は130mmHg以下というイメージで良いと思います。(そもそも脳梗塞になった時点で再発予防に抗血小板薬のみますから。。。)
・脳出血後の再発予防
130/80mmHg以下を目標とする
再発リスクが高いと思われるときは120/80mmHg以下
ちなみに、高血圧ガイドライン2019でもほとんど同様です。(脳出血の120/80mmHg以下は記載なかったようにみえますが)
イメージとしては、ベースを130/80mmHg以下として、状況に応じて目標をあげる(さげる)でよいのでしょう。
患者さんひとりひとりの、脳の環境は違っています。
血管が細い方、狭窄があったり、一本血管がなかったり、、、
では、これらの血圧目標値がどうやって決まっているかというと、大きな臨床研究を行うことになりこれまで沢山行われ、今の数値がいいのでは、となっております。
伝えたい内容は上記のみになります。
詳しい論文については、下記に一部載せておきます…論文マラソンなので笑
PROGRESSという臨床試験(Lancet. 2001 Sep 29;358(9287):1033-41)が、古いのですが10カ国172病院、患者さん総数6105人で行われました。
脳卒中またはTIA後の患者さんに利尿薬・ACE阻害剤またはプラセボで血圧の評価を継続して行い、脳卒中の再発のリスクをみたところ、プラセボ群より1/4以上(28%)再発が抑えられました。
また、この試験の血圧管理をさらに細かくみていたサブ解析(J Hypertens. 2006 Jun;24(6):1201-8.)では忍容性があるならば、115/75mmHgがいいのでは、などと記載されています。
いわゆる軽い脳梗塞といわれるラクナ梗塞では、SPS3という臨床研究(Lancet 2013; 382: 507–15)で、収縮期血圧(SBP)<130と130-149mmHgに分けてみると、卒中全体としては有意差ないものの、脳出血は有意に抑えられたというデータでした。
これらのデータは、脳梗塞・脳出血のデータいずれも深く検討され、特に先程のサブ解析の論文では血圧がSBP112-168の間で低いほど脳出血が少なかったというデータもあり、今のガイドラインとなっております。
では、常に血圧さげまくればいいじゃん!!とはいかないのが難しいところで、血管が閉塞していたり、細くなることで還流障害(頭の血流が悪い)があると血圧130mmHg以下で脳卒中の再発が増える、なんて文献もあったりして、、、(J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2014 Jan;85(1):118)
一筋縄ではいかないですね。。。
これらの論文以外にも、たくさんありますし、こういったランダム化比較試験のメタ解析もあり、収縮期血圧130mmHg以下がとても大事なことを強調させていただきます。
(メタ解析はちょっと読む元気が…また時間があるときにでも😥)